トップページへ 塩の情報室 目次
塩の種類と特徴
製法と原料による塩の分類

「あらしお」の話
(2010記載)


「フレーク塩」の話
(2010記載)


「焼塩」の話
(2010記載)


「藻塩」の話

「自然塩」の話
(2010記載)


「ミネラル塩」の話
(2010記載)


「化学塩」の話
(2010記載)

市販の塩の種類

「あらしお」の話
(旧原稿)


自然塩の話
(旧原稿)


岩塩の話

天日塩の話

生活用塩とは

深層海水塩

塩の添加物
「化学塩」の話(2010記載)


 イオン交換膜を使った海水濃縮法を使って作られた塩を化学塩ということでこれは自然とはかけ離れた健康に悪い塩というイメージで宣伝しているものがあります。化学塩という言葉は最近やっと使われなくなってきましたが使いたい人が沢山いるようです。他社の誹謗中傷になるから使用禁止になっている言葉だから使わないけどやっぱりイオン膜を使った塩は化学塩で体に悪いのではないかと思っている人がいるようです。

 イオン膜は1972年に実用工場ができて、それまでの長い塩田時代に終止符を打つことになった。民間各社の長い研究成果であり、外国の模倣ではなく日本が独自に技術開発したものであること、塩田業者が長く悩まされてきた多雨性気候の日本で、雨が降っても製塩 できるようになり、常に天気を見ながら行われる農業的な作業から、工場で塩ができるように変わった。当時、「製塩は農業から工業に変わった」ことを誇らしくアピールしていた。しかし、このような技術的大進歩はこのような光の部分だけでなく影の部分を伴った。すなわち、21の塩業組合(工場)の解体、1700余の製塩業者、3000人余の従業員、の失職や転職があり、しかも塩専売制のため自由な塩製造は制約され、特にイオン膜、真空式蒸発缶の組み合わせ方式は日本の塩生産の大過剰を招くので工場建設は制限された。結果として政府は莫大な補償金を払ったがなお一部の人に恨みを残すことになったと考えられる。(2009年塩専売制廃止後塩作りを始めた人が多数いるがその人たちはイオン膜製塩に実用化に伴って塩作りをやめさせられた人たちではないようだ)

 開発者は農業から工業へと誇らしく宣伝し、塩作りをやめた人は工業で造られた塩は電気分解で作られている、化学合成で造られている、化学塩で自然からかけ離れており健康に悪く味も悪いと非難した。その後、イオン膜塩=化学塩というキャンペーンは自然塩を売り込みたい人たちに利用され引き継がれていった。電気分解や化学合成は全くそのようなことが行われていないことが社会にも知られてしまったが、その後も化学塩という根拠や理由を合理的に説明したものを私は見ていない。化学塩と断定する人の論拠(例:真島真平著;白い塩の恐怖、河本成一;病気に効く天然塩健康法など)の大きな部分は「にがり」分が少なすぎるということのように理解した。現在一般家庭用に塩事業センターが販売している「食塩」を代表とすれば「にがり」分は少ない。遠心分離機の脱水過剰だということだろう。しかしこれは製品規格のあり方に賛同できないということであり、化学反応を伴う方法というわけではない。「にがり」を多く残したまま販売しているイオン膜法の塩も多種類販売されているし(例:「瀬戸のほんじお」、日本のにがり塩、など)、イオン膜法以外でも「にがり」が極めて少ない塩も多種類販売されている(例:岩塩、精製塩)。

 イオン膜塩は化学工業用の塩だから化学塩というのだという説明をする人があります。イオン膜塩は食品加工業に使われていますが化学工業用には全く使われていません。日本の塩の消費量850万トンのうち650万トンは化学工業用(ソーダ工業)用ですが、そのすべては輸入塩でその大部分はメキシコ、オーストラリア産の天日塩です。(注:イオン膜の開発時代に多くのソーダ工業関係者がイオン膜製塩でソーダ工業塩の供給ができるのではないかと夢見たことは事実です。しかし、にがり成分特にカリウムが塩に残りやすいこと、コストが天日塩より高くなること、などの理由で実現しませんでした)

 こういうわけで、「化学塩」という言葉は、イオン膜法の塩を誹謗するために使われた言葉で、定義もなく、化学塩とする根拠もないものです。誹謗宣伝は不正競争防止法第14条で厳しく禁止されていることもあり、化学塩という言葉は最近ほとんど見かけなくなりました。すでに死語になった言葉と考えてよいでしょう。

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