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粗製海水塩化マグネ
シウムの規格基準の
制定について(解説

塩のにがり成分(2)

苦汁の話

塩のにがり成分(1)
粗製海水塩化マグネシウムの
規格基準の制定について(解説)
2007年9月18日塩製造業者宛に「粗製海水塩化マグネシウムの規格基準の制定に伴うお知らせ」を郵送しています。その解説をホームページに掲載することをお約束しております。以下今後の対応を含めご検討の参考としてください。なお、この解説は厚労省あるいは食用塩公正取引協議会準備会の公式見解ではありません。食用塩公正取引協議会準備会事務局長をしている尾方 昇個人の考え方をご紹介して参考に供するものです。

1.各企業に送ったお知らせの内容
「にがり」製造加工企業の皆様
食用塩公正取引協議会準備会
東京都港区六本木7−15−14日本塩工業会内

粗製海水塩化マグネシウムの規格基準の制定に伴うお知らせ
1. この文書をお送りした経緯
食品・添加物等の規格基準の一部改正(平成19年厚生労働省告示73号平成19年3月30日)に伴い、粗製海水塩化マグネシウムいわゆる「にがり」の製造販売に関する法律上の扱いが大きく変わりましたので周知のためお知らせします。
食用塩公正取引協議会準備会は食用塩公正競争規約の制定とその実行機関としての食用塩公正取引協議会の発足準備のための会合ですが、粗製海水塩化マグネシウムに関する規約改正が業界に大きな影響があること、それにもかかわらず塩業界全体を代表する組織がないこと、などから、食用塩公正取引協議会の名前でお知らせするものです。
2. 規約改正に伴い「にがり」業者は何をしなければならないか
添付の厚労省の文書を見てください。要点は以下の通り。
粗製海水塩化マグネシウムの製造又は加工を行う営業者は、
(1) 添加物製造業の営業許可を受けなければならないこと、
(2) 営業許可を受けるためには、製造施設について都道府県等が条例で定める施設基準に適合しなければならないこと、
(3) 食品衛生管理者を置かなければならないこと
(4) 平成20年4月1日から適用されること
補足的注意事項
食品衛生管理者は施設ごとに専任者をおかなければならない(掛け持ち、名義貸しは認めない)。
大学で医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、または農芸化学を卒業したものは申請すれば食品衛生管理者資格を受けられるが、それ以外は食品衛生管理者講習を受けなければならない。
食品衛生管理者講習は、土日を除く35日間、14教科201時間の講習を受けなくてはならない。受講料35万円
加工とは小分け包装業者まで含まれる。
3. 製塩業会の皆様にお願いすること
困ったことがあれば、もよりの保健所と相談してください。
◎なお、本件についてホームページ「塩の情報室」http://www.siojoho.com/に近日中に解説を書く予定ですからご参照下さい。
添付書類
食安発第033000号 厚労省食品安全部長発 「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について」抜粋
粗製海水塩化マグネシウム規格

2.お送りした経緯の説明
食品・添加物等の規格基準の改正(平成19年厚生労働省告示73号平成19年3月30日)に伴い、粗製海水塩化マグネシウムいわゆる「にがり」の製造販売に関する法律上の扱いが大きく変わりました。何の措置もしない場合、平成20年4月の規約施行に伴い多くの「にがり」関連業者が違法操業状態になることとなるため、厚労省としては保健所を通じ規格基準の改正の周知を働きかけていますが、各企業への周知について食用塩公正取引協議会準備会に協力を求めており、塩業各社への周知に協力することとなりました。
食用塩公正取引協議会準備会は食用塩公正競争規約の制定とその実行機関としての食用塩公正取引協議会の発足準備のための会合ですが、粗製海水塩化マグネシウムに関する規約改正が業界に大きな影響があること、それにもかかわらず塩業界全体を代表する組織がないこと、などから、食用塩公正取引協議会準備会の会員の要望を受けて、厚生労働省食品安全部担当課と協議を進めており、業界の現状説明、規約の問題点、業界の要望を伝えてきた経緯があり、厚労省の協力要請を受けることとした次第です。
なお、「にがり」の製造加工業者のリストはないので、このお知らせは特殊製法塩業者として登録された方にお送りしており、「にがり」の製造加工とは関係のない企業にもお送りしておりますことをご了承下さい。

3.業界として留意しなければならないこと
(1) 従来からの「にがり」と今回定められた食品添加物としての粗製海水塩化マグネシウムは違います。従来からの「にがり」の一部が食品添加物粗製海水塩化マグネシウムとして販売できることを定めたものです。
(2) 粗製海水塩化マグネシウムの新しい規格や、それに伴う届出、食品衛生管理者の常置などの義務は、食品添加物としての粗製海水塩化マグネシウムの製造販売に関わるもので、飲料などの食品原料、工業用や農業用、飼料などに関するマグネシウム原料、など食品添加物以外についての規約ではなく、食品添加物以外について従来の「にがり」の製造販売には今回の規制外となりますから、それらについては従来通り製造販売ができます。食品添加物としての粗製海水塩化マグネシウムはその大部分が豆腐用凝固剤であることから、食品添加物としての豆腐用凝固剤として製造販売しなければ従来通りの営業ができるものと解釈できると思います。
(3) 「食品衛生管理者登録講習会」を受講するには、東京に長期間出張し講習を受講する必要があります。その場合、受講料35万円、45日間の出張旅費を考えると100万円程度の経費を負担しなければならないこと。専門的な内容の講習を受けるとすれば、企業の骨格となるような方が長期間不在になり事業への影響が極めて大きいこと。と推測されます。数人規模の零細業者においては、人員の確保、経済的負担等を考慮して対応を考えてください。
(4) 従来の実績値から推定すると、今回の規格では規格外品となる「にがり」が多数発生する。規格外品が出る可能性の高い項目は、塩化マグネシウム含有量が12%以下、塩化ナトリウムが4%以上、性状が褐色〜黒色。これらの規格外品は、食品衛生上も豆腐凝固剤の性能としても問題ないが、食品添加物としての粗製海水塩化マグネシウムとして販売すると違法になります。また、食品添加物以外の商品として、粗製海水塩化マグネシウムではない「にがり」として販売した場合、豆腐用凝固剤として使ってはいけないのか、また豆腐への凝固剤の表記方法などその取り扱いがまだ明確にされていません。

4.食用塩公正取引協議会準備会と厚労省の交渉経緯
上記のような問題をふまえ、「にがり」が食品衛生上の問題がないこと、腐敗変敗の恐れがないことから、厚労省には、食用塩公正取引協議会準備会として次の要望をしました。
(1) 保健所の指導の下で食品衛生管理者をおかずに事業継続ができるようにすること。
(2) 「にがり」限定の食品衛生管理者資格を作り短期間講習とすること。
(3) 規格外品を食品としての表示すること。
しかし、(1)(2)については担当部局は全く検討する意志がなさそうです。(3)については今後検討するものと推測しています。
なお、講習内容は食品衛生管理者講習の受講資格については条件を緩和し、「にがり」の製造加工の実績があればよいこととし、さらに講習の臨時的開催については前向き検討中とのことです。

5.粗製海水塩化マグネシウム規格の内容説明
粗製海水塩化マグネシウム(にがり)の規格
項目 規格基準
定義 海水から塩化カリウム及び塩化ナトリウムを析出分離してえられた、塩化マグネシウムを主成分とするもの
含量 塩化マグネシウム(MgCl2として) 12.0〜30.0%
性状 無〜淡黄色の液体で、苦味がある。
純度試験
(1)硫酸塩(So4として)
4.8%以下
(2)臭化物(Brとして) 2.5%以下
(3)重金属(Pbとして) 20μg/g以下
(4)亜 鉛(Znとして) 70μg/g以下
(5)カルシウム(Caとして) 4.0%以下
(6)ナトリウム(Naとして) 4.0%以下
(7)カリウム(Kとして) 6.0%以下
(8)ヒ素(As203として) 4.0μg/g以下
定量法 EDTA滴定(Mg全量を塩化マグネシウムとして換算) 検液2g/200mlを5mlとりEBTを用い0.01M-EDTA滴定値a 検液20/100ml希釈、NNを用い0.01M-EDTA滴定値b MgCl2=(a−0.25b)×3.803/試料g
(1) 定義:この定義では塩湖水を濃縮してえられる「にがり」は含まれません。例えばイスラエル死海の「にがり」は粗製海水塩化マグネシウムではありません。
(2) 含量:塩化マグネシウムとして12〜30%と定めています。「にがり」中の塩化マグネシウムは、私が数年前かって集めたデータでは、膜法濃縮で1/5程度、蒸発濃縮で1/3程度がこの濃度より薄くなっており、新しい食品添加物規格外品になります。塩化マグネシウム濃度および後述の塩化ナトリウム濃度はかん水組成、晶析方法、最終煮つめ濃度、などで変化します。マグネシウム、ナトリウムが多くても少なくても食品衛生上何の問題もありません。「にがり」中の塩化マグネシウム濃度を上げようとすると「にがり」濃縮に別工程を組んだり、「にがり」濃縮釜を設置するなどの必要性が起こる場合があることは注意しなくてはなりません。
従来より「にがり」マグネシウム濃度を上げた方がよいという議論がありましたが、「にがり」が高価に売れたときに「にがり」生産量を上げるために濃度を下げることは止めるべきだということ、「にがり」濃度を上げて塩の歩留まりを上げる方が製塩コストが下げられるから製塩業にとっては有利だという観点がなどがありました。一方で煮つめ濃度を上げると塩の中のマグネシウム、カリウム濃度が上がること、それを避けようとすると濃度管理を厳密に行ったり、カリウム分離を行うなどの操作を必要として工程管理が煩雑になる。等の意見もありました。
規約の文章で「塩化マグネシウムとして」と書かれているのは、硫酸マグネシウムのマグネシウムも塩化マグネシウムとして存在するものとして換算するという意味であろうと考えられます。その場合、マグネシウム含有量に3.9173をかけると、塩化マグネシウム換算値が求められます。
(3) 性状:無色〜淡黄色液体となっており、枝条架で濃縮した濃褐色「にがり」、海藻浸漬をした黒色に近い藻塩「にがり」は食添として認められるか確認する必要が生じます。固形になるまで濃縮したもの、固形「にがり」として輸入されたものなどは食品添加物粗製海水塩化マグネシウムになりません。
(4) その他:以上のほかの成分について現状ではほぼ問題はないものと考えていますが、蒸発法「にがり」の一部に硫酸塩が4.8%以上、亜鉛70ppm以上のケースがあったこと、藻塩については分析例をもっていませんが海藻ではヒ素含量が多いことから注意が必要ではないかと考えています。
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